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徘徊する者

地元の飲み友達で、趣味がツーリング…という、ハーレー乗りの男性がいます。
とある大企業に勤める彼は、ある日思い立って1ヶ月の長期休暇を取り、日本全国をハーレーで回る…という、バイク乗りなら誰もがやってみたい事を決行しました。
いくばくかのお金とテントを単車の荷台に括り付け、彼はあての無いツーリングに出発しました。


本州を西へ、西へ。
そして、とある山陰地方の海辺の公園に到着しました。
もう日はとっぷり暮れ、単車での移動は危険…と判断した彼は、近くのコンビニで軽い夕食を買い込み、その公園内にテントを張って1泊する事にしました。
薄暗い明かりの中でご飯を流し込み、明日の為を考えて早目に寝袋に身体を押し込んだそうです。


静寂に包まれた夜半過ぎ。
彼は、聞き慣れない奇妙な音で目を覚ましました。





ザッ…ザッ…ザッ…





テントの外で、何かが蠢くような音でした。
最初こそ、“野犬か何かかな…??”と軽く考え、もう1度眠りに就こうとしたのに、どうも眠れない。
心の中に、何かが引っ掛かってるんだ…何だろう…。


あ、そうか。




音が、規則正し過ぎるんだ…。





確かに、野犬なら4本足で歩く筈。
こんなに歩く音が規則正しい筈が無い。
いや、それ以上に…
音が、野犬のそれよりずっと重たい音だ…。


テントの傍には街灯があり、周囲を何かが徘徊しているのであれば、シルエットがテント内にも差し込む筈です。
しかし、それすらも見えず…ただひたすら、足音だけが彼のテントの周りを周回しているのです。


え…何でだよ…。


テントの外に首を出す事は出来ない。
取り返しのつかない事に巻き込まれてしまうかも知れない…。
そう思った彼は、なるべく音が聞こえないように寝袋の中に身体を隠しました。


しかし、音はより鮮明に、そして…
より速度を増して、テントの周りを周回し始めたのです。


規則正しい、あたかも二本足で歩く人の足音のような音だけが速度を増し、彼のテントの周りで走り始めました。
いつ終わるかとも分からない足音。
しかし、そこには実体は無い…。
じゃあ、今外で走っているのは、一体何者なんだ…?!!





助けてくれ…!!





次に彼が気付いたのは、翌朝、すっかり日が昇った頃でした。
彼は慌てて寝袋から這い出て、テントを開けて外を見回しました。


比較的柔らかい地面の上に張ったテント。
その周囲には、足跡1つ残っていなかったのです…。

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