元々、霊感なんて無かった…との事。
しかし、あの社宅に住むようになって、そして私と付き合い始めて…
それから、何かがN氏の中で変わってしまったようでした。
ある日の夜8時頃の事。
遅番の仕事をこなしていた私の携帯が、けたたましく鳴り始めました。
N氏からの着信。
普段、私が仕事だって分かっている時はメールで連絡をくれるN氏。
そのN氏からの、この時間の電話。
これは何かあったな…。
と判断した私は、すぐに応答しました。
電話の向こう。
N氏の声は怯えきっていました。
いっ、今…見た…。
その日、N氏は仕事を定時で終わらせ、早い時間から“あの”社宅に帰ってきていたそうです。
軽い晩御飯を終え、何の気なしにたたんで置いてある布団の上に身体を横たえてリラックスしていたところ…
不意に、身体が動かなくなりました。
え…??
N氏にとっては初めての金縛り。
何が何だか分からなくなり、呆気に取られるのも無理はありません。
暫く、自分の身に起こっている非常事態が飲み込めず、そのままなすがままにされていたとの事。
その内、壁の“ある一点”が気になり始め、そこから目が離せなくなったそうです。
何の変哲も無い、真っ白な壁。
その“ある一点” だけが無性に気になり始め、N氏はそのままそこを見つめ続けていました。
不意に、その壁の一部が揺らぎ始め、渦を巻き始めました。
そして、渦はいつしか、形となってN氏の眼前に姿を現したのです。
それは、目玉でした。
ぎょろりと大きな目玉。
それが形を形成し、N氏の眼前に現れたのです。
顔を背けたくても背けられない。
目を離したくても離せない。
目玉は、まっすぐにN氏を向いています。
叫びたくても叫べない。身体が言う事を聞かない。
声も出せないまま、暫しの間その“物言わぬ目玉”と対峙していた時。
目玉は不意に、壁の向こうに引き込まれるかのようにかき消され、N氏は慌てて私に電話を掛けてきたとの事でした…。
霊感というものは、伝染するものなのでしょうか。
元々全く霊感の無かった人達が、私と交流を持つようになると霊感が芽生える。
今までも、同じようなパターンがある事を考えたら…
私の霊感は、伝染性のモノなのでしょうか…。