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【僕の見た秩序。】KEN21事件
=経緯と考察 思想的側面編=


皆様は、【筒井康隆】という小説家をご存知でしょうか。
名前でピンと来ない方も、【時をかける少女】の原作者と書けば、なんとなく分かるかと思います。
その他の代表作は、【男たちの描いた絵(短編集)】【夢の木坂分岐点】等があります。私の大好きな作家です。

日本国内で唯一、黒くリアルに虚像の世界を描く事の出来る天才です。


彼は、一時期“断筆”を行っておりました。
その理由は…ニュース等でも大きく取り上げられていたので、ご存知の方も多いと思います。

【無人警察】
近未来の日本を描いた秀作でした。
これが角川書店発行の高校教科書【高校国語T】に取り上げられたのですが、その中に書いてある

てんかん患者が車の運転をしないように
てんかんキャリアはデータベースに保存された

この表現が、てんかん差別を助長するものである…と、日本てんかん協会が角川と筒井氏に抗議し、これに怒った筒井氏が

あたしゃ、キれました。プッツンします。

と、以後の作品創作を行わない【断筆宣言】をしたのです。




この事件は、私達に【表現の自由】を一考させるに充分な事件でした。
これは、私が筒井ファンだから言う訳ではないのですが、この1件は

言論界全てに対する挑戦

であったと思います。
何故ならば、筒井氏がファンでなくとも認める程の【天才】であるという側面、そして文脈から差別に値する意図が読み取れない事にありました。

重度のてんかん患者が車の運転をするのが危険な事は周知の事実だし(これを差別というのであれば、運転中に何が起きても仕方ないという事ではないでしょうか)、筒井氏の表現からもあえて“差別する”意図は微塵も感じ取れませんでした。


この事件は、簡単に言うと“言葉狩り”の一環であったのです。






さて、この項で何故筒井氏の話を持ち出したかと言いますと…
今回のKEN21事件には、“言葉狩り”の意図が明らかに汲み取れる事にあります。
最大のポイントは、KEN21側が

言葉の意図を読み取らず、一部の言葉に反応している

事にあります。



まず、KEN21側が抗議した内容ですが、

「脅威のペットショップ列伝」というコラムは営業妨害的中傷文です。

という事でした。

しかし、ヨシナガ氏の文章を全文読み返してみましょう。
KEN21側が、具体的にどの部分を“名誉毀損”“営業妨害”と定義したのかは不明ですが、問題の文章を全体的に読み返してみて、大多数の人がそのように感じなかった事実が背景にあります。
(ここで全文掲載する事は、ヨシナガ氏の著作権を侵害する事になりますので控えさせて頂きます。)


ならば、KEN21側は何をもって“名誉毀損”“営業妨害”としたのか??
これは私の推測ではありますが、
・一部の嘲笑的表現を抜粋して理解した
・KEN21側が、問題文章以外の部分に目を通していない


この2点を踏まえた上で、KEN21側が反応した可能性があります。



そうだとするならば、これは言葉に対する冒涜、言論への弾圧となるのではないかと思います。



【ブラック・ユーモア】というものは、この世には確かに存在します。
TVに出演しているコメディアンが、自分又は他人の身体的特徴を示唆して“ネタ”として扱う事もブラック・ユーモアの範疇であるし、前述の筒井氏の作風も、明らかに“ブラック・ユーモア”です。
そして、ヨシナガ氏の文章も然り。


人間の心の中に、奇異な物を笑う感情がある事は自然な事です。
そして、皆それを受け入れ、多くのブラック・ユーモアを飲み込んで生きているのです。
ブラック・ユーモアを笑う者達の中にどれだけの残虐性があるか、それを自覚する為にブラック・ユーモアが存在します。
そして、笑う者がそれを自覚している以上、ブラック・ユーモアはユーモアとしてなり得るのです。


ブラック・ユーモアを作り得る才能を持つ人には、規制は必要ないのです。

こういうと誤解を招くかと思いますが、ブラック・ユーモアを作り得る人の文章には巧妙なトリックがあり、そのトリックに隠された、対象物への“愛情”を汲み取る事が出来る者だけが、ブラック・ユーモアを読む資格があるのです。
対象物への愛情を汲み取る事が出来ない者にとっては、ブラック・ユーモアはただの“ブラック”でしかありません。






言葉を汲み取る事が出来ない人が、言葉を狩る。

これほど、奇異な事はありません。





一部の言葉に過剰反応する事が、どれだけ愚かしい事か。
差別や哂いの感情を無視して生きる事が、どれ程非人間的か。
そして、言葉の意図を読み取らない者達が、どれだけ哀しい存在か。





次回は、今回の事件を総括してみたいと思います。


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