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裏の崖

大学時代にアルバイトをしていた、とあるチェーン店居酒屋での出来事です。


この居酒屋は2階構造になっていて、1階の調理場と、2階のドリンカー(ドリンクを作る所)が、裏階段で繋がっている…という構造でした。


最初にその異変に気付いたのは、2階を1人で掃除している時でした。
突発的に、私の第六感が警鐘を鳴らし始めました。



…確実に、ここには“何か”がいる…!!



感覚が現実の物となるのに、そう時間は掛かりませんでした。
何故なら、その当日に“それ”は姿を現したのですから。
ふと気付くと、閉め作業の為に置いてあった醤油ポットの位置が替わっている…。
そして、ダスター(布巾)までもが、明らかに落ちる訳も無いような隙間に落ちている…。


次の日には、ふと気付くとパントリー(料理を出す準備をする所)の中に、中学生位の少年が座っていました。
何とも言えず寂しそうな表情で…。


それに気付いてからは、頻繁に現れるようになりました。
それは、土曜日の大混雑、満席の店内でも起きるようになりました。
不意に名前を呼ばれ、大声で返事をしても、誰も“呼んでいない”と言う…。
確かに…私の名前を呼ばれたのは確かですが、それは“私の知っている声”ではありませんでした。
暫く、そんな日が続いていたのです。


その頃には、他の霊感の無いアルバイト達も、

何か変な事が起きる…。

と言い出した為、バイト連中の中ではもっぱらの噂になっていました。






物を動かされるなど、悪戯される程度ならほんの序の口。





裏階段を駆け下りる人影を見た人もいます。





不意に名前を呼ばれる事もあります。





完全に、2階は“巣”になってしまっているようでした。
噂が噂を呼び、誰もが2階の担当を嫌がるようになってきました。


そんな話が定着して暫く経った頃の事。
バイトを定時で上がって、更衣室で友達と着替えていました。
私の店の入っている所は、すぐ裏に崖があり、高台には病院が建っています。
何か強烈な気配を感じた私は、惹き込まれるように裏の崖が眼前に迫る、その窓を開けて外を覗いてしまいました。
そこには…





無数の人影が、下に並んでいたのでした。





1人1人がコチラを見上げていました。
無言の表情。刺すような視線。

…見なかった事にしよう…。

そう判断し、忘れる事にしました。


そのすぐ後…とあるお店の社員の方と一緒に飲む機会に恵まれました。
どうやら、この社員さんも明らかに奇怪な空気に気が付いていた、との事。
そして、私よりも霊感が強く、何が原因でこうなっているかが分かっている、との事…。

裏山に、男性が埋められている。多分、それが原因で色々惹き付けてしまっているんだろう。
年は32だって言ってる。
そして、“自分は殺された”って訴えてくるんだ…。



未だに、“発見された”という話は聞きません。
誰にも知られず、ひっそりと眠る死体。
いつになれば彼は発見されるのか、そして発見されたらどうなるのか…。
恐ろしい話ですが、私の中で小さな疑問として残っているお話でした。

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